それからすぐに、几帳面なおっさんも「公団」に当たっていなくなった。 いなくなる時のおっさんたちは、妙にうれしそうだった。 後から聞いた話だと、おっさんたちが住んでたのは 六畳 風呂なし トイレ&キッチン共同 で。 その近辺の、型落ちワンルームマンション並みの家賃を払ってたんだって。(もちろん、型落ちワンルームマンションにはキッチンだって風呂だってある!) そりゃ、うれしいよね〜。 公団は、 2kで。 風呂ついて。(キッチンは当たり前だし、トイレはあるし) 家賃がそれまでの半分以下だったら。 孤独死を嫌がる風呂無し物件の大家さんたちが、年寄りになかなか部屋を貸してくれないので。 家賃の安い別の物件に引越すことも出来ず、 身を寄せる事のできる親族もいないため、 おっさんたちは、六畳一間にバブル期並みの高い家賃を払って来ざるを得なかった。 我が大家さんに言わせると、 主人と買った初めての物件だから、あまり手を加えたくないし。 古い造りだから、設備をいじるような事はしたくないし。それに耐えられるかも疑問だ、と。 それを言い訳に、管理をせず。 結果的に引っ越しの出来ない年寄りから、高い家賃をとっていた。 自分は、 借り手がつかなくて、何回かの値下げの結果、かなりお値打ちな家賃で借りることのできた店子だったから、 おっさんたちの大変さはあんまりピンとこなかった。 ちなみに。 自分がその店を借りた時は、内装はいじっても良いけど、退去する時には造作費を請求しないでね。 って大枠の内容だった。 それが後になり、面倒な事へとつながった。 おっさんたちも猫もいなくなって、静かになった。 おっさんたちが住んでた部屋は、あまり掃除もされずにそのままあった。 時々、誰かが階段を登り降りする音が聞こえた。 木造だから、靴のまま階段を上がるとギシギシ音がする。 安普請なので「その人」の体重までも伝わってくる。 なので、 「土足厳禁」の張り紙をした。 静かで良かった。 2、3年借り手がなかった。 時々、誰かが階段を上がる気配がしたけど。